地球温暖化の嘘は嘘
地球温暖化の脅威についてはこのメールマガジンでも過去に何度か取り上げている。原稿を書いている今は8月の半ばで、今夏はまだ終わっていないが、今年の夏は世界各地で気候変動による異常高温や洪水被害、大規模な山火事の発生が多発している。国内でも昨年の九州北部豪雨に続き西日本豪雨災害が起き、各地で40℃を越える猛暑が連日観測されている。埼玉県熊谷市では7月23日、41.1℃を観測し国内観測史上最高気温を更新した。いまだに、地球温暖化は人間活動、CO2の増加が原因ではないとして、地球温暖化は嘘だという論調を展開している馬鹿な学者(中京大学の武田邦彦教授など)が存在しているが、今では地球温暖化の嘘は嘘だと否定する科学者の考えが世界の主流になっている。
再び地球環境問題がクローズアップ
私は1980年代から地球温暖化問題に強い関心をもっていて、ジャーナリズムの報道に強い関心を寄せてきた。2006,7年ごろ元アメリカ副大統領のアル・ゴアによる「不都合な真実」が出版されて地球環境問題は一気に盛り上がったが、数年後沈静化して、最近、日本ではあまり新聞やテレビに報道されなくなっていた。マスコミ関係者は東日本大震災や原発事故の復旧、経済問題やスキャンダルの報道を優先し、地球温暖化問題は不都合な真実として報道自粛していたように思える。
その報道自粛で情報が少なかったこの10年間に地球温暖化問題は着実に進行していた。今年になって積み重なった原因が一気に噴出してきて、世界中の誰の目にもただならぬことが地球気象に起こっていると実感されるようになった。世界に異常気象と災害が続出しているのでマスコミも報道せざるを得なくなってきている。世界で起っていることを総合的に見れば、何が今起こっていて将来どのようなことが起こるか大まかに知ることが出来ると思う。
世界各地で洪水起こる
今年の4月、イスラエルからパレスチナ自治区ヨルダン川西岸にかけて、大雨や洪水、雹などの影響で若者ら十数人が死亡。乾燥した中東でこのような災害が起こることは非常に珍しい。5月には中東のイエメンやオマーンにサイクロンが直撃し水害が起こった。以上はイスラエル在住のガリコ恵美子さんの報告。ラオスでは7月23日に建設中のダムが長雨で決壊し大規模な洪水被害をもたらした。7月上旬にはロシアのモンゴル国境付近のザバイカリエで観測史上最大の洪水が発生した。中国雲南省では毎年のようにどこかで洪水が起こっているが今年も激しい豪雨により各地で河川が氾濫した。四川省や甘粛省でも洪水が起こった。7月の西日本豪雨だけでなく世界中で未曽有の豪雨や洪水被害が起きている。日本では7月に72時間降水量が全国の雨量観測地点の一割強に当たる138地点で観測史上一位を更新した。中でも高知県馬路村では1319mmになった。そして西日本豪雨が発生した。豪雨の後、被災地に連日猛暑が襲った。気象庁はその猛暑を災害であるとした。
世界中で森林火災発生
世界気象機関(WMO)の7月20日の記者会見によると、ノルウエーでは北部の北極圏で7月17日、7月としては史上最高の33.5℃を記録し、翌18日には北極圏の別の場所で夜間の最低気温が25.2℃と日本の熱帯夜に相当する高い気温を観測した。読売新聞7月21日の記事ではスウェーデンで7月中旬だけで高温と乾燥による森林火災が50件以上も起きて国家の危機的状況だと伝えている。APPによれば、ヨーロッパ北部で長期化している未曽有の熱波で北極圏で森林火災が頻発し、ラトビア西部で大規模な山火事が起こっている。ラトビア政府は農業部門で非常事態宣言を出した。8月8日の共同通信の報道によれば7月23日から始まったカリフォルニア州の山火事でサンフランシスコ北部の火災の焼失面積は8月6日までに東京都の半分以上に相当する1150平方キロに達し4万人が避難している。日経新聞の報道によればギリシャでも時を同じくして29日、大規模な山火事が起こり死者が91人に達した。山火事がギリシャのチプラス政権をゆすっている。日経新聞8月1日の記事にはシベリアで800平方キロの森林火災が起きていると報じている。
世界中で猛暑・最高気温の更新
世界の異常気象を報じるインターネットのアース・カタストロフ・レビューによれば、地中海の海水温度が原因不明の異常状態で通常より5℃高い海域もある。7月10日アリゾナ州南部で今まで見たこともないような超巨大な砂嵐が発生した。7月15日フランス・リヨンで雹嵐によって風景が雪景色のようになった。巨大な積乱雲スーパーセルによるものである。北アフリカのアルジェリアのワルグラという町では7月5日、これまで一度も経験した
ことのない非現実的な気温51.3℃を記録した。カナダのケベック州では7月16日、激しい熱波によって70人が死亡。
ニューズウィークの配信によれば、8月4日ポルトガル中部で46.4℃を記録。スペイン南部で45.1℃になった。カリフォルニア州南部のインペリア郡(人口17,000人)で7月24日世界史上最も暑い雨が降った。降り始め時点での気温が48.3℃だった。気温37.7℃以上で雨が降ることはほとんどない。それ以上の気温の場合、高気圧がつきものだからである。
原因は
どうしてこのようなことになるのかというと、東京大学名誉教授山本良一氏によれば、地球温暖化による影響がさらなる温暖化を加速させるポジテブフィードバックが起こっているからだという。北極圏の海水温が高くなり海氷が激減している。高緯度地域の気温が上昇し赤道付近の気温との温度差が少なくなるとジェット気流の流れが遅くなり大きく蛇行するようになる。そのことで世界各地で異常気象がもたらされているのだと言っている。日本の7月の記録的な猛暑は太平洋高気圧が居座り続く中、その上にチベット高気圧が大陸から張り出してきて二階建て構造になったからである。その気圧配置の元を辿っていくとインド洋の海水温が東西で逆転していたからである。通常はインド洋の海水温は東が高く西が低い、これが逆転するダイポールモード現象が起きていたからである。根本原因は人間の欲望にあり、エゴの心にあり、科学技術の急速な発展にある。それが人類のカルマである。
2018年は始まりの始まりの年
今までは地球温暖化は人間活動によるものではないとする科学者の見解も多く、人間活動による化石燃料の消費、CO2の増加が起因していると断定できない事もあった。しかし観測結果が積み重なり、そして実際に得られるデータと気温上昇がはっきり人間活動の増加によるものと断定できるようになった。そして、予測された通りの異常気象が起こった。私は、2018年は誰の目にも温暖化がはっきりした事実と具体的な体験として、人類が引き起こしているものだと自覚出来た年になったと思う。そういう意味でエポックな年になったと思う。これからは毎年このような気象災害が起こるだろう。そして、ますます激しくなっていくと予測する。
後戻りできない深刻なことが起こる
私は中国やインド、東南アジア諸国の経済発展が始まった時に、「あー、これで地球環境問題は深刻になる」と予想した。その時、思ったのは気温上昇がどのくらいで、海面上昇がどのくらいになるか、だった。近年の海面上昇は年間2mm前後である。2mmだったらさほど問題ではない。10年で2cm、100年でも2cmだからだ。本当にそんな程度で済むかということである。南極の氷が1/10融けると海面上昇は7メートルになる。これには海水温上昇による膨張やグリーンランドの氷河融解は含まれていない。こうした中で、8月7日インターネット上で驚くべきニュースが流れた。コペンハーゲン大学、ドイツのポツダム気候影響研究所、オーストラリヤ国立大学などの研究者がまとめた論文で、このまま極地の氷が融け、森林が失われ、温室効果ガスの排出量が増え続ければ転換点となる、しきい値をこえる。そうなれば気温は産業革命前よりも4~5℃上昇する。海面は現在よりも10メートルから60メートル上昇する。という、衝撃的内容である。アメリカの気候科学者の第一人者であるNASのジェームス・ハンセン氏が2012年講演した話では今世紀末までに海面上昇は5メートルに達すると予測している。私たちの孫たちはそれを目撃することになる。
予測と対応
海面上昇は人類が築き上げた都市文明を崩壊させるであろう。その前に世界各地で河川が氾濫し、沿岸地域は巨大台風などの暴風被害により多大な損失を被ることとなろう。気候変動で食料が生産できず世界各地で飢饉が起こるだろう。安全な場所を求めて民族移動が起こる。それが軋轢になって戦乱が起こるだろう。気候変動はテクノロジーでは解決できないと私は考える。私はどう考えても悲観的な結論になってしまう。我々は困難な状況に陥る前に備えるときが来たと思う。我々は人間の暮らしの原点に帰って、何が起こっても大丈夫に暮らしていける方法を見出す時が来たと思う。人間に必要な最低限は何か、昔の人の暮らしはどうだったか研究してほしい。この状況下、AIも地方に移住することを勧めている。若い世代の皆さんに地方都市近郊や中山間地域への移住を勧めたい。そこに新しい価値観の理想郷を築いてほしいと思う。今の生活を替えられない人はそのようなことが起こるだろうと予測してビジネスに役立ててほしい。ピンチはチャンスと考えて積極的に生きる生き方もあります。
結論・パニックにならないために一歩先を行く
スーパーコンピューター・地球シミュレータは2027年に温暖化限界値+2℃を越えてしまうと予測している。そうなれば温暖化が加速して、もう後戻りできなくなる。負のスパイラルが始まる。福島第一原発事故よりも、もっと大変なことが起こりつつあるのです。ノアの箱舟のような、未曽有の災害多発の困難を乗り切るための『安全な砦』が必要な時代が始まったのかもしれません。志ある日本の若者よ、機会を捉えて洪水の危険性がない中山間地域に移住してください。それが自分と家族と子孫を安全に守る道だと私は考えています。世界中でそのように考える人が増えつつあります。これからの時代は地方に移住した方が良いか、首都圏に住み続ける方が幸せかは意見が分かれるところなので、それぞれの人の立場で広く情報を集め、分析し深く観察し先の先を考えてください。
<著:坂本知忠>
(協会メールマガジン2018/8/1からの転載です)