コラム[自殺を無くす道]

現代日本の自殺者数は年間3万人を超え社会問題になっています。3月11日の東北関東大震災や福島第一原発事故により、夢や希望を失った人の自殺増加が懸念されています。

なぜ人は自殺するのか、その理由はいろいろ考えられるが、私は人間の執着心が根本原因になっていると考えています。生に執着するのであれば自殺しないと思いがちですが、執着心の強い人は皮膚の外側の世界も内側の世界も確固たる世界であってほしいと強く願っています。良く考えればその願いは不自然な願いなのですが、自分を含めて世界が安定していることを求める心が強いので、それが突然襲う変化によって覆されたとき、強い不安と恐怖に襲われます。

戦いの矛先が他に対して向けられているうちはまだ良いが、敗北が自己に向けられた時、自己を傷つける行動となります。私はそれが自殺の根本原因だと見ています。自分の肉体に対する無執着とは完全に正反対の心の状態です。

ジャイナ教の教えの核心は「アヒンサー」つまり非暴力・不殺生です。自殺は自己に対する暴力、殺生です。アヒンサーの実践には恐怖を無くすことがポイントになります。恐怖を無くすには、無常について心底から理解する必要があります。無常が理解出来れば、「アパリグラハ」無所有・無執着も楽に実践出来るでしょう。

無常が解れば、人間は何も所有することは出来ない、また執着することも出来ないと理解出来るでしょう。人間は何も持たずに生まれてきて、何も持たずに死んでいきます。人間は生まれると自己のカルマと宇宙の求心的エネルギーによって自分の周りに様々な物や人を引き寄せます。しかし時が過ぎればそれら全てのものは別の所で別のものになってしまいます。そして、命が永遠の過去から未来へと続いていくエネルギーであると理解できれば無常が解ります。無常が解ればアパリグラハは簡単です。無常が解れば恐怖がなくなります。恐怖がなくなれば非暴力が出来ます。

「アネカンタ」非独善主義も非暴力に欠かせない教えです。自己に対する暴力をやめることが自殺を無くす方法です。自分に自信が持てるようになることが大事です。プレクシャ・メディテーションの実践は自分に自信が持てるようになる道でもあります。

プレクシャ・メディテーション集中合宿で、只見川と叶津川の合流点で毎朝行う「無常についてのアヌプレクシャ」は無常を理解する為の実践です。合宿参加者は皆この瞑想法がとても気に入ったようです。

<著:坂本知忠>
(協会メールマガジン2011/7/20からの転載です)

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