コラム:無限の自由とは

地球に生きる全ての生き物たちに生命力が宿っている。生命力の根源は宇宙が始まった時に生じた電磁気的な+と-の流れである。この電磁気的な+と-の流れが生じたとき情報としてのカルマが同時に発生した。カルマとは陰と陽、拡散と収縮、苦と楽、快と不快、善と悪のように存在している物の質の捉え方であり、また、カルマとは測定の仕方や、判断の基準によって結果が動く物事の相対的性質であり、不二一如のことである。生命が宇宙に生じたときそこに『個性・性質』としてのカルマが結びついた。情報としてのカルマが形を変えて、生き物たちに命の願いとして根本的な欲望が備わっているのである。その欲望が身体に備わった苦・楽、快・不快の感覚とともに、命を守り、命を進化させる原動力、働きになっているのである。

その根本的な欲望とは命を長らえたいとする自己保存本能 (食欲・外部から身体を持続成長させるためにエネルギーを摂り入れること)、 子孫や種族を増やしたい自己拡大本能 (性欲・繁殖の仕組み)、あらゆる束縛から自由になりたい自由獲得本能の三つである。全ての生き物の願い、最終目的は永遠の生命、生命の無限拡大、生命の無限自由の獲得と言える。

生き物たちにはその三大欲望が生命の深いレベルで情報としてインプットされている。完全なる自由を獲得するために、時には食欲や性欲が妨げになる。完全なる自由の獲得を目指そうとする古代のジャイナ教や仏教の出家修行者達は食欲や性欲のコントロールが重要と考えた。そうした考え方が戒律の中に入っている。仏教やジャイナ教の理想は輪廻転生しないこと、もう生き物として生まれないこと、解脱が理想である。無限の自由とはカルマの束縛、つまり電磁気的エネルギーの流れやもっと精妙な霊的エネルギーからも離れてその束縛から自由になることである。

無限の自由とは生き物たちの最終目的地で、無限の愛、宇宙との合一 (梵我一如) と同義語であり、全ての宗教の目標である。宗教とは無限の自由を個人的に達成しようと起こってきたものである。

一方、無限の自由を集団的に達成しようとして人類全体が努力しているのが政治であり、経済であり、科学の進歩発展である。経済の発展や科学技術の発達は人間が無限の自由を求めて活動している結果の現れである。飛行機や自動車、鉄道機関車などの交通機関、冷蔵庫、洗濯機などの家電、テレビ、スマホ、パソコンなどの情報通信機器の登場は人間が自由を追求している集団的な活動の結果として出現したと言える。

テクノロジーの高度な発達は生き物としての人間が集団的に求めている進化の現れであり、必然的な方向性でもある。コンピューターの発明は今や高度に改良発展して人工頭脳が作られるようになった。人工頭脳と各種センサーが結びつき、車の自動運転がまさに始まろうとしている。近未来、人工頭脳が自ら学習し判断までするようになるので、車の運転走行に運転手としての人間は必要なくなるだろう。

私は自動車道路の必要性は物質輸送のためのトラックだけになってしまうと想像している。人間の移動手段はヘリコプターを小型化した一人乗りのトブコプター、つまり、ドローンを大型に発展させた飛行物体になると思っている。トブコプターの人工頭脳が目的地と気象条件や飛行高度、経路を最適に判断し、障害物や進入禁止地を避け、トブコプター同士の空中衝突を避けて我々を安全に早く目的地に運んでくれる。東京と只見間の移動所要時間は江戸時代には一週間を要した。車が登場した初期の頃60年前は只見まで一日がかりだった。そして今や高速道路が整備され自動車の性能が良くなって4、5時間で行けるようになった。そして、トブコプターが登場し実用化されると2時間程度に短縮される。

友達が「只見も良いところだけど、東京から遠いからねー」と今は言う。トブコプターの登場で夜、友達とお酒を飲んで10時頃東京に居ても、その日の深夜には只見の自宅に戻れるようになる。このようなことが実現されると文明は全く新しい局面を迎える。自然災害の少ない所、風景の美しい所、水の清らかな所、森や耕地が豊かな所が、人が住む適地として一番の価値を持つようになってくる。只見のような見捨てられた所に人が集まってくるだろう。

2016年頃、自動車の燃費性能偽装問題を起こして業績低迷にあったスリーダイヤモンドがトブコプターの研究にいち早く着手して自動車の生産からトブコプターの生産に業態を切り替える。スリーダイヤモンド社は将来トブコプター生産で世界一の企業になるかも知れない。

農業はアンドロイドが野菜工場で作るようになっている。気象条件に影響されないので、雪の降る冬の只見でマンゴーやパパイアなど南国のくだものが作られている。地球温暖化、気候変動によって露地栽培での農業が難しくなるが、アンドロイドが工場で農産物を生産することで食糧問題は解決している。エネルギー問題は自然エネルギーから電気分解によって作られた水素による燃料電池発電が主役となっている。エネルギーは個人が自前でつくるので送電線や電柱がなくなり村や町の景観も美しくなっている。

月や火星では人間に先駆けてアンドロイド達が都市や町、文明を作っている。アンドロイドが作った宇宙都市に人間は宇宙旅行するようになる。地球の引力の束縛から解放されて人間活動は宇宙に広がっていくだろう。50年後の世界は今からは想像すらできない世の中となっているだろう。

沿海部に発展した大都会は気候変動による海面上昇があるとき急激に起こって、対応ができず居住地を放棄せざるをえなくなるかもしれない。大都市住民が2016年頃のシリア難民のようになって、過疎地の中間山間地に移住することになるなど、50年前の現在には誰も想像できなかったことが起こるかも知れない。

どんなにテクノロジーが発展しようとも人間の動物的な身体の仕組みはすぐには変えようがない。高度にテクノロジーが発達した社会が出現すれば、動物的身体を持つ人類にますます不自然生活を強いられることになる。不自然生活による適応障害が起こってさまざまな心身の病気が人類を苦しめることになるだろう。そんな時代が到来したとき、人間にとって免疫系や内分泌系、神経系のコントロールは今よりづっと重要なテーマとなる。そのためにヨガの身体的訓練や瞑想の実践が欠かせないものになる。プレクシャ・メディテーションを伝え遺すことは未来の孫達へのメッセージであり贈り物でもあるのだ。

<著:坂本知忠>
(協会メールマガジン2016/5/1からの転載です)

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