コラム:カラーセラピー・色彩療法

プレクシャ・メディテーションの第六段階はレーシャ・ディヤーナである。レーシャとはジャイナ教哲学でいう魂から放射される「霊的な色彩光」のことである。レーシャは本来、魂から発せられた純粋無垢な光であるが、魂の周りに付着したカシャーイと呼ばれる汚染物質の影響で色が付着する。着色したレーシャは魂よりも外側のレヴェルにある電磁気体や肉体に影響を与え、肉体の外側に広がって人それぞれのオーラの色になると考えられている。

オーラとは仏教で云う後光であり光背のことである。キリスト教ではオーレオールと言い、古代から人間の周囲には不思議な色彩をもつ何かがあると知られていた。

身体を取り巻くオーラは特殊能力を持つ人にははっきり見えるらしい。現代ではオーラを映像に写せるオーラカメラが開発されている。マハーヴィーラは長期間の断食や瞑想修行により、オーラを見ることができ、その色の持つ意味を極めて正確に解釈できたと考えられる。古代ジャイナ教聖典にはレーシャに関す記述が多い。

ジャイナ教瞑想修行のレーシャ・ディヤーナというテクニックは、肉体の外側にポジティブな色彩をイメージして、その色彩を魂の外側を雲のように取り囲んでいるカルマ体レベルに流入させ、ネガティブな色とされる黒や灰色、その他くすんだ色と置き換えることにより、カルマ(業)の浄化を目指すものである。色彩は私たちの精神状態に影響を与えているが同時に、精神状態によって霊的色彩光(レーシャ)が影響を受けていると考えられる。

色彩とは一体何なのだろうか。物理学的な解釈では「色彩とは電磁波における可視光線のことである。」と定義する。私たちの周囲には光や電波など波の性質をもった電磁波に溢れている。ガンマ線やX線、紫外線といった電磁波は可視光線より波長が短く、赤外線やテレビ電波、ラジオ電波は可視光線より波長が長い。赤の波長は700nm(ナノメートル)前後で、青は460nm前後、紫は380nmである。

可視光線の波長が長いと赤に近づき短いと紫に近づく。可視光線をプリズムで分解すると、彩度の一番高い純色の虹の七色となる。その色彩を波長の短い順に並べると紫、藍、青、緑、黄、橙、赤になる。色彩の彩度は電磁波の振幅が高く(大きく)なると明るくなり、振幅が低くなると暗くなる。光である電磁波は物質のない真空中でも伝わっていくが、音は空気や鉄の棒などの伝える物質がないと伝わらない。

我々は光の無い所では何も見ることが出来ない。光源から放たれた光が物体に当たり反射され、それが人間の目の視細胞を刺激し脳によって変換され、はじめて私達は形や色を知覚することが出来る。物体色は物体そのものに色が備わっているわけではない。あくまで光のどの部分の波長を反射するかが、その物体の色を決定する。物体が全ての光を反射すると白く見え、全ての光を吸収すると黒く見える。

色の見え方には2種類あって、反射の結果として見える色と、光が物体を通過することで見える色がある。この場合透過した色だけが見え他の色は吸収されてしまう。ステンドグラスの場合赤い波長だけを通すと赤く見え、他の色はガラスに吸収されてしまう。色彩照射療法はその原理を使っている。レオナルド・ダビンチは教会で紫色のステンドグラスを透過した色彩を浴びて瞑想することを好んだ。

古代ギリシャでは太陽神が信仰されていた。その中心地になっていたのがヘリオポリスの癒しの神殿である。癒しの神殿では太陽光を色に分けて、それぞれの色によって特定の治療を行っていた。そのヘリオセラピー(太陽色彩療法)の父が有名なヘロドトスである。色彩療法は古代ギリシャや古代インドに起源がある。

光線療法やカラーセラピーは本質的には自己の内的空間を探求することを意味する。それは色彩を観るビジュアライゼーション(瞑想)によっても可能である。瞑想によって魂の汚れを取り除いていけば魂の純粋性が立ち現れる。自己の本質である魂からの純粋な光によって自己を深いレヴェルで癒すことが出来る。自分で自分の医者になる方法の一つである。人間の悟りや人格の向上は身体的にも精神的にも外部から上手に光や色彩を取り入れてそれを活用することができるかどうかにかかっていると言っても過言でない。

光は色の本質(親)であり、又、光は生命の根源・本質である。光はエネルギーそのものである。全ての物質はエネルギーが形を変えたものである。人間もエネルギーのかたまりによって出来ている。138億年前のビックバンの光エネルギーが人間という形のエネルギーに変わって存在しているのである。私達は光である。私たちの本質つまり親が光である。生き物の生命エネルギーの根元は太陽光である。人間だけでなく地球上の生き物が食べている全ての食物の源は太陽光である。光が神であるとはそのことを云う。光なくして人間は生存できない。又、色彩の本質も光である。だから人間の生命は色彩の影響を強く受けていると言える。目を有する生物は皆何らかの色覚がある。昆虫、魚、鳥、両生類、爬虫類は色彩を感じている。世界は色彩にあふれている。自然界の多彩な色彩を見ていると、この世はなんと美しい世界なのだろうといつも思う。そして色彩は形とともに個別のものに個性を付与して、個性の情報元となっている。

人間は目だけでなく皮膚でも色を感じ取っている。皮膚には色を識別する特殊なセンサーが備わっている。だから、皮膚に光線を照射する療法が生み出された。光線療法に照射する色彩は 赤、オレンジ、黄色、レモン、緑、青緑、青、藍、スミレ、紫、マゼンダ、深紅である。レモン色は慢性病、青緑は急性病に。紫色、深紅色、マゼンダは心臓病、循環器系、生殖器系をはじめとして全ての症状に良い。活動過多の人に紫色を照射し、活動不活発の人には深紅色を使う。マゼンダは両者のバランスをとる時に使用する。無気力の人に対してレモン色とオレンジ色を合わせて使う。感覚麻痺の時にはこれに赤を加える。藍色は鎮痛、出血、膿傷のある症状に使う。緑色とそれに近いレモン色や青緑は体のバランスと関係しているので必ず照射(トネイション)に含めるようにする。1979年マルティクとベレンジは酵素の反応速度を増やして活性化させる、あるいは不活性化させる色彩や、細胞膜を通る物質の移動に関与する色彩があることを発見した。

赤は生命力を高める色で交感神経を刺激する色である。青は副交感神経を刺激する。赤い色は瞬発力が高まり青い色は持久力を高める。不眠症の人は青い敷布や毛布を使うと良い。赤やピンクでは寝つきにくい。ベージュ色はリラックスさせる色、一番筋肉の緊張をほぐす色である。白い色が健康に一番良い。黒い服ばかり着ているとシワが増えるし早く老け込む。明色の橙色をピーチというが皮膚に不思議な効果があり、ピンクとともに若返りの色である。

色彩は私たちの精神性にも深く関係している。色彩は意識や感情に深い影響を与える力がある。プレクシャ・メディテーションのレーシャ・ディヤーナはそうした理論を基にした瞑想法である。一例を挙げれば、頭頂に黄色をイメージすることで知性が高まる。眉間の奥にオレンジと深紅の中間色をイメージすることで直感力が高まる。胸の中央でピンク色を観ることで友愛の情を育てることができる。色彩と精神性の関係については いまなお不統一で未知なることも多く、更に研究の上、瞑想体験を深めて別の機会に詳述したいと思っている。

<著:坂本知忠>
(協会メールマガジン2016/7月第64号からの転載です)

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